40. 押し花
間違えたところにいる
それとは気づかず
長い列のひとりとなる
私を傷つけたくて
伝えたのではない
傷ついていたから言ったのだ
いつわりを
「あなたは いつも人にうなずき
誇りを失う」
愛する人のことばが 思い浮かんだ
そう 私は言われたところにゆく
遅れないように努力して
途方に暮れながら
待ち続ける
自分を保つ
それは 押し花を作ることに似ている
本のページにはさまれ
薄くなって
もうひとつの自分になる
水分と形を失い
なお原形をとどめる
矜持(きょうじ)を持ち
押し花をこわす
私に なにもなかったように
今もなにもない 強さ
すき通り
葉脈の名残りをとどめ
それでも存在を示す
かつての花をこわす喜び