25. 赤とうがらし
廃屋の庭に
赤とうがらし
より赤く
よりつややかに
ひとりで歩いて
2時間がすぎ
翌日 ここを目標にして
また訪れる
同じ赤さ
同じ葉の形
雑草のなかに
唯一の人の香り
屋根は朽(く)ち
戸がはずれ
ちょうつがいのあとに
ねじの穴
とうがらしは
聞いてきた
井戸の鳴る音を
それは誇っていた
住んでいた人の想いを
残していることを
嵐は自然のゆえならず
この小さき井戸の空洞目差して
吹いてきた
雷雨は自然のゆえならず
それは赤きとうがらしと 閃光を競い
人のあとの 消し難き力に敗北した