10. 雨

 

雨が庭に降りそそいだ
しずくは芝にとぎれることなく流れた
私は窓辺でそれを見ていた
そして「あの時の自分は正しかったか」と自問した
よどみなく口から出た
自分の正義を主張することば
 
「正しい時には黙っている」
それは その人の生き方であった
だからその人は
私のことばを聞き続けた
私は冷静を失い
さらに理由を説明し 声をあら立てた
 
雨はなぜ 音もなく降るのだろう
その静けさは正義のしるし?
私は聞き続ける人の
沈黙を侮蔑した
黙すること
それは「勇気」を意味するのではない
 
でも それは正しかったのだろうか
その人は 間もなく笑顔を見せた
「疲れているのだね」と言った
雨は芝生をよみがえらせた
一層青く 
強い雨足を吸収した
 
その人のいない家で 答えを問うために
私は窓を開けた