7. 新 雪
崖の途中で
道がなくなった
同じ山道を
登っていたのではなかった
確か頂上に
小屋があったはずだ
雪が深くなった
すべって あわてて枯れ木につかまった
木が折れた
小屋らしいものはなく
いただきに 空が広がった
広大な景色のなかに
雪が 雲のように浮いた
突然 耳もとの空気が音を立てた
鳥が飛び立った
餌をさがしにきたのだろう
さえぎるものなく
鳥は黒い点になるまで飛び続けた
「これから冬になるのに もう芽が出ているよ」
私たちは 枝の先に顔を近づけた
小さくとがったみどりの芽が
かたい枝から出ていた
「『いつが冬なの』って 聞いてごらん」
そう言って あなたが枝をはなした
それは勢いよくもどり 真っ直ぐに立った
小屋は見つけられず
私たちは 山を下る時にも迷った
雪道は 落ち葉の道にかわっていった