40. 敗 北

 

うつぶせになって 土を見た
ありがはっていた
それは仲間と交信して
目的へとむかった
次のありは
もう少し長く仲間と話した
同じ目的へとむかった
 
土は 私より冷たかった
ありの巣は この下にある
ありは仲間と食べものを持ち運び
手を取り合って 
収穫を喜んでいるだろう
土を冷たいと思わず
巣のなかを暗いと思わず
集めたものを 分けているだろう
となりのありのひざをたたいて
「おいしい?」と聞いているだろう
 
自分の体より大きい穀物の粒を
引いているありがいた
私は しばらくそれを見ていた
悲しみは
敗北を認める力へとかわった
私は立ちあがり
ありを踏まないように注意しながら
歩きはじめた