25. 落 日
西日は
はちみつのように輝いて
山の端に沈んだ
私はふり返って
いつか見た
入道雲をさがした
西日は充足し
1日の長さに感謝して
落ちた
私は日が沈む山の端を
記憶しようとした
あの松林の
ちょうど上のあたり
建物は
最後の美しさをたたえ
私の1日を
べっ甲色に染めた
私は あの日
入道雲の強さをうらやんだ
時をとめて 両手を差し出し
「その強さをください」とたのみたかった
あのようにそびえてみたい
他の雲を
凌駕(りょうが)したい
力を信じて
かわらずにいたい
でも 落ちてゆく日の姿を
目で追っておどろくばかり
私は きっとその時以来
強くなっただろう
こぼれるぬくもりを
愛おしみ
沈む日にむかって
私を覚えていてくださいと
たのんだ時から
入道雲をもうさがさないと
約束した時から