22. お味はいかが?

 

ココアが好き 
パリのあのホテルのココアが
あなたをそこにおさそいした
店員が誇らしく1杯目をそそぐ
ココアはまるで ポットから出るのをためらっているかのように
ゆっくりしたたる
 
「お味はいかが?」とたずねたら
あなたが 1口飲んで首をかしげた
「そうね パリで2番目においしい」と言った
「じゃ 今度1番おいしいお店に案内して」
「チョコレートを食べる感じのココアよ」
あなたが 私の興味をかき立てる
 
それから 長い年月が流れた
私は同じホテルに滞在し
あなたとすわったいすに 
もどってきた
店員が誇らしく1杯目をそそぐ
ココアは
「パリで2番目においしい」と言われたことを覚えていた
カップのなかの黒いひとみが
「また あの友だちときてね」と私に語りかけた