10. チゴイネルワイゼン― 禅

 

瞑想のなかに
万華鏡の
過去と夢
動き出そうとする
四肢を
静寂のなかに
閉じ込める
沈黙する
色彩のおどり
 
炎は
立ち昇る
一筋の香りであった
思考のなかで
自己の存在までの時を
重ね 
結跏趺坐(けっかふざ)
動かぬ形のなかで
舞う自由
 
チゴイネルワイゼン
残酷に
力を
幽閉する
半眼(はんがん)のまま
時間をせき止め
終章まで
誕生の起源の
香(こう)を聞く