61. ぜんまい
くるくる巻いている
ぜんまいの芽
なかになにが入っているのか
見てみましょう
赤ん坊の指のように
しっかりとにぎられ
なかなか開こうとしない
それでもやわらかい 繊細な渦
薄みどりのやさしい葉
その胸にかくしている
もう一重の環
また環
私は開いた葉の渦巻きを
もどそうとしました
それは なかばもどり
なかば 開いたまま
私は両手で 葉の先が
次の環に抱いてもらえるように
もどしもどし しました
それは 体内の子どものようにうつむき
また眠りにつきました
茎のにこ毛は白く
春の風を呼びます
森にたたずむ私の足もとに
いくつもの新芽
「見てね 見てね」
それらは私の足をくすぐりました